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真夏のICU入院

夫は金曜日から肺化膿症の治療のためにT病院に入院した。

T病院には4月に同じ病名で17日間入院したが、今回は何と入院した先がICU!…

ということから前回より重い症状で入院したことがわかろう。


前回の記事で述べたように、月曜の診察で処方された抗生物質を施設で3日間服用したが、熱が一向に下がらず、

金曜日に撮ったCTと血液検査によって病状が月曜日よりさらに悪化していることが判明した。

今回のCT画像では、4月からある右肺の古い病巣以外に、左肺全体をすりガラス状に覆う陰影が発生していた。

肺機能の低下によって酸素値が90を切るようになり、炎症を示すCRP値がさらに上昇した。

更に気がかりなのは、今回は腫瘍マーカー(CEA)も高い数値を示した点である。

以上のことから、連休中に病状が急激に悪化する恐れがあるという理由でICUでの集中治療となった。


夫のICUデビューは、「夫はまだまだ絶好調」と思っていたかった私に、

彼の病がついに次のステージに突入したという辛い現実をつきつけた。

ICU室のベットに横たわり、身体全体に様々なチューブをつけられて点滴や酸素を注入され、

脈拍、呼吸、酸素値を常時モニタリングされている夫を見ていると、

「本当にこんなに悪いの?」

と現状を受け入れることができない自分がいる。

だってお昼は私と一緒に病院内のドトールでミラノサンドを美味しそうに食べていたし、

試しにアイスコーヒーのストローを口にくわえさせたら自分で吸って「美味しい」と言ったし、

病院の待合室で急に自分で立ち上がってふらふら歩くことも出来た。

それが5時間後に身体を拘束されて点滴で水分補給されるなんてちょっと信じられない。

早く出してあげたいなあ。


と不安な気持ちを述べてみたが。

実はそんなに絶望的な気分に陥っている訳でもない。

夫が新しいステージにおいても理想的なサポート体制に恵まれそうな予感がするからだ。


今回の入院中の主治医となる呼吸器内科のS先生は、大変話しやすいお人柄の女医さんである。

入院に当たって、夫の現在の病状と今後の医療方針を私たち家族に説明して下さったあと、

今後の治療に当たって私たち家族にまず決めて欲しいことを次のようにのべられた。


➀ 4月から存在する右肺の陰影の正体が癌であるかどうか、現時点では確定できない。

 問題は癌であるかを確定するための気管支鏡を用いた検査等が煩雑で、患者に苦痛を与えることである。

 それが果たして痰をとるだけでも5人がかりだった夫に耐えられるのか。

 癌であるとわかったとしても、その肺癌の手術が本人にとって望ましいことかも考えなくてはいけない。

 手術はできる。しかし、術後に「生きたい」という強い意志をもってリハビリをすることができる患者でないと、

 「長期間の苦痛を伴う寝たきり状態」にするための手術をした、ということになりかねない。

② 最新の医療技術を駆使した治療を行うことで、患者の生存率を高めることはできる。

 しかし、どんな優れた治療方法であっても、それが患者の本来の気持ちに背く治療であれば、

 それは単なる医師のエゴでやった行為に過ぎないように思う。 

 夫がどういう治療を望むような人であったのかを知りたい。

 以前そのような話をしていなかったのであれば、家族がどのような治療を希望するのかを教えて欲しい。

③ 肺の炎症の原因が特定できないまま、熱が下がらず状態が悪化している。

 まずはICUでの集中治療で、状態の安定を図っているが、この先呼吸不全に陥る可能性もありうる。

 その時人工呼吸器をつける希望があるかどうかをうかがいたい。

 心臓が停止したときに心臓マッサージをしてもよいのかも確認したい。
 
 
 「ご主人にとって望ましい治療方針を一晩家族で相談して、翌日に返事をしてください」と、

 S先生は翌日の午前に再度面談を行うことを提案して下さった。


 S医師との面談には次女も勤務先から新幹線で駆けつけて参加した。

 S先生は次女が医師であることを知って、画像の分析や治療の経緯を医療用語を交えて詳しく説明して下さった。

 家族と医師の双方の立場を理解できる次女の存在は、S医師にとっても私にとっても大変有難く、

 そして夫のDNAをしっかり引き継いでいる彼女は、夫の「気持ち」の最大の理解者でもあるように感じた。

 
 医師との面談後、私と娘は施設に赴き、夫の病状やS医師の考えを報告し、

 翌日の医師との面談に施設の方も出来れば参加して欲しいとお願いした。

 帰宅後、電話で面談に参加できなかった長女と話をして、家族の意思統一をした。



 翌日の面談は、今後の夫の治療と介護に関わる、T病院のスタッフ3名と施設代表のIさん、私と次女で行われた。


 S医師がICUに入ってからの夫の様子を報告した後、私と娘が以下の家族の方針を伝えた。


 1、発病する前の本人は、確固たる生活信条や価値観をもって生きていたと思う。
  
  彼は一人静かにお酒を飲みながら本を読むのが好きな人であった。

 (それを聞いたS医師は「ご主人は素敵な人だったんですね」と夫をほめて下さった。)

  その喜びを味わうことが出来なくなってしまった今、私たちが望むことは、

  とにかく穏やかな余生を送らせてあげたい、ということに尽きる。

  本人は今まで施設の皆さんの手厚い介護のお陰で、穏やかな生活を送っていた。

  病院での治療や手術に延命の効果があっても、 その結果病院での苦痛をともなう長期の寝たきり生活

  になってしまったら、それは彼が本来望んでいた余生の姿ではないように思う。

  一日でも長く彼の無邪気な笑顔を見ていたいというだけの理由で延命を望むのは,、

  彼の尊厳を無視した家族のエゴだと思う。

  重度の認知症である彼を長期間の寝たきり状態にはさせたくはない。

  
  と願う一方で、彼はまだ61歳で食欲があり、生きる力が大いにあるようにも感じる。

  もしも長く施設で穏やかな生活が送れるための治療や手術があればぜひお願いしたい。

2、人工呼吸器や心臓マッサージはしないでほしい。

  次段階の治療がないのに人工呼吸器で呼吸だけ続けさせて生き続けても、

  それは本人にとっては何の意味がないのではないかと思う。



  S医師は私たち家族の意思を十分理解して下さり、これから私たちと密に連絡をとりながら、

  家族の意向に沿った治療方法を考えていくと約束してくれた。

  施設のIさんも、施設側でできる緩和治療体制について説明して下さった。

 

 もちろん今すぐに延命治療か緩和治療かの選択を迫られるという時期には至っていない。
 
 でもその覚悟をもたせる良いタイミングを下さったS先生に感謝すると同時に、

 新しいステージにおいても理想的なサポート体制が期待できそう、という安心感を抱いている。。


 今日もこれからICUに夫に会いに行きます。
 
 突然各種モニター機器の機械音がだけが響き渡る見知らぬ空間に閉じ込められて

 きっと不安な気持ちでいっぱいだと思う。、

 でも実は決して孤独ではなく、家族以外の沢山の人が彼を応援していて

 どうやったら本人にとって一番良い方向に進むことができるのかを

 みんなで一生懸命考えている最中であることを、笑顔で伝えてあげたいなあ。

  
 (長文を読んでいただきありがとうございました。

  暑い日が続きますが、皆様どうぞ楽しいお盆休みをお過ごしください)
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テーマ : 病気と付き合いながらの生活
ジャンル : 心と身体

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プロフィール

ルッコラ

Author:ルッコラ
ルッコラとバジルと走ることが大好きです。
家族は夫と娘二人と黒いフレンチブルドッグのラッキー君。
2009年に若年性アルツハイマーと診断された夫は、在宅介護と認知症専門病院の入院を経て、現在は有料老人ホームにいます。要介護4。食事は全介助。でも仲良く手をつないで散歩をすることができます。介護は初心者なので、どうぞ感想やアドバイスをお願いいたします。

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