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友 遠方より来たる

7月と8月に、夫の元職場のK先生とS先生ご夫婦が夫に会いに来て下さった。

お二人共夫とは何年かぶりの再会である。

仕事のこと、家族のこと、なんでもざっくばらんに話せる肝胆相照らす仲であった年下の同僚が、

まさかここまで変わり果てた姿になってしまうとは、思いもよらなかったのではないか。

私はお二人に、

「もう病気が進んでしまって、私や娘のこともわからない状態ですよ。」

と話していた。

つまり、

「せっかくいらしても、がっかりするだけだと思います。どうか、あまり無理なさらないで下さい。」

と暗に伝えたかったのだが、それでも良いからと来て下さり、夫に対して以前と同じようにふるまわれた。

7月の週末、夫の施設に来られたK先生は、廊下をふらふら歩いている夫に近寄り、手を握りながらこうおっしゃった。

「○○君、会いに来るのが遅れてごめんね。

僕も全ての仕事をすべて辞めて、君と同じ自由人になれた。

だからようやく、こうして君と話をしに来れたんだよ。」

夫もにっこり笑いながらK先生にあいさつをした。

K先生と私と娘は、夫の部屋で、お気に入りの椅子に座った夫を囲んでお互いの近況を報告した。

心やさしいK先生は私や娘と話をしながら、夫に話しかけることを忘れなかった。

私は夫がK先生に敬慕の念を抱いていたことを懐かしく思い出した。

K先生は時々夫を上野の飲み屋に誘って下さった。

「彼は、先生と上野で飲んだことをよくうれしそうに私に話していました。」

と先生に言うと、K先生もそのことをなつかしそうに思い出して、夫に

「○○君、上野の君と良く行ったあの店はなくなっちゃったよ。もう飲めないんだ。」

と残念そうに報告していた。

K先生と夫には何か共有する思いがあったのかもしれない。

いや、二人は今なお思いを共有し続けていて、私が終始蚊帳の外に置かれているだけなのかもしれない。

K先生は帰り際に

「○○君はやっぱりぼくのことをわかっていたよ。」

と爽やかに私に報告された。

夫とK先生の上野の例の店でのサシ飲みを、一度覗いてみたかったです。


S先生は、このブログで夫の急変を知り、先週奥様と病院に駆けつけて下さった。

我が家とS先生のご家族は、お互いの子供が小さい時から一緒にキャンプに行ったり、我が家に泊まりにきたりと

家族ぐるみのお付き合いをさせていただいた。

夫の病気がわかったときにあれこれ助けて下さったS先生は、我が家の救世主だ。

夫に会いに行く前に、彼の肺のCT画像のコピーや血液検査の結果をみせながら病状を説明すると

「うーん。これは中々大変だね。」

と厳しい現状を分かって下さった。

病床の夫はS先生と奥様の顔をみてとてもよろこんだ。

そしてS先生が夫に顔を近づけると、夫は分厚いミトンをはめられてしまった手を必死にのばして、

S先生のあごにしきりと触れながら、意味不明な内容をあれこれ話しかけるのだ。

「あれ、なんで顔を触りたがるんだろう。」

このおじさんがうれしそうにおじさんのあごを触る「おっさんずLOVE」的光景をどう受け止めて良いのか、

一同、ちょっとぽかーんとしていたら、突然S先生が

「わかったよ!」

と愉快そうにいった。

「ほら、オレ前ヒゲはやしていたけれど、ヒゲがなくなったからびっくりしているんだよ。

それで,ヒゲそっちゃったんですねって俺に言っているんだよ。」

それで夫に

「あのね、もう白髪ばっかりになっちゃったからヒゲはそっちゃった。

だからこんなにツルツル。」

とあごを触り続ける夫に話しかけた。

それを聞いた夫は納得の笑顔になり、またなにかしゃべりだした。

「うん、顔色もいいし、何かまだ話したい事があるような顔してるよね。」



K先生とSさんのおっしゃる通り、夫は本当は色々わかっていて、

仲良しだったK先生やS先生にもっと沢山話したいことがあるのかもしれない。

私とは毎日会っているからもう十分かと(笑)

少なくとも「俺のことをわかっている。」と確信している友人と会って

病気と関係ないことを話しかけられたことは

体温や血圧やCT画像や病名ばかり知りたがる無粋な人と会って

あちこち体を触られたり痰を吸引されるより

はるかに愉快な、至福のひと時であったに違いない。

どれだけ生きていられるかより

どれだけ楽しいひと時があるかの方が大切なのだと

楽しそうな夫の笑顔を見て改めて思った。

K先生、S先生ご夫妻、夫に会っていただきどうもありがとうごさいました。


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テーマ : 幸せに生きる
ジャンル : 心と身体

一般病棟には移れたけれども

昨日、ICUから一般病棟に移ることが出来たけれども、まだまだ回復の方向に進んでいない。


ICUから出た夫の様子であるが、熱は下がったが、調子が悪そうなので心配だ。

心配なことの一つ目が痰が絡んだゼロゼロした咳をすること。

今日も何度も看護士さんに痰を吸引してもらっていた。

一週間前は高熱で咳をしていたけれど痰はからんでいなかった。 どうして痰が増えたのかな。

心配事の二つ目が、口からの食事が中止されたこと。

食事介助をしようと思って夕方に来たのに、6時になっても食事が運ばれない。

そのときはじめて食事から点滴による栄養補給に切り替わっていたことを知った。

一昨日食事中にむせたので嚥下機能を調べたら、飲み込みが悪かったかららしい。

先週の金曜日は私と一緒に美味しそうにドトールのミラノサンドを良くかんで食べていたのに。

散歩もおしゃべりも出来なくなってしまった今、食事介助だけが私が彼のためにしてあげられることだった。

彼のためにしてあげられる何か他のことを考えなくては・・・。


鼻から酸素を吸入しているのは今まで通り。 

鼻にカテーテルが装着されている夫の姿に段々違和感を感じなくなってきた。

これから鼻カテーテルが彼の生涯の伴侶となってしまうのかしら。


実は今日の面会で一番心配になったことが、夫の目つきの変化である。

今日の彼は今までに見たことがないほど目がうつろで、

私が話しかけても無反応のままぼんやりと天井をみつめて、時々なにかをつぶやいていた

びっくりしたのは時々手をひらひらと挙げて、

天井から降ってきた何かをつかんでそれを動かすようなるようなしぐさをすることだ。

きっとこの人なりに何かを見て、何かを感じ、何かをしようとしているのだろう。

でもそれが何なのかが、私にはわからない。

彼の存在は確認できるが、その実体がますますつかめなくなってしまった。

彼の肺を覆うすりガラス状の何かが、体の中ですごい勢いで増殖していて、

彼の身体全体をすっぽり覆いつくして、彼を外界から遮断しようと企んでいるのか。

いや、もしかしたら彼自身が何かに感染された結果何かの蚕になってしまって、

沢山の痰を吐きだして繭を作ろうとしているのかしら・・・。

と妄想の世界に逃げこみたくなるほど、

今日の彼の目つきと動作は怪しげで、浮世離れしていた。


とどうしようもない妄想ばかりしても仕方がないわけで・・。

  今、彼の肺はどうなっているのか?

  結局健康状態は良くなっているのか、それとも悪くなっているのか

  これから具体的にどういう治療をするのか。

明日先生に電話で様子を聞いてみようと思う。

どうか早く夫に食事の許可が下りますように。

(できれば美味しそうな普通食をもう一度食べてもらいたいです)


おまけの話: 

差額ベット代に関して 昨日、病院からこんな内容の電話があった。

「ご主人の状態が安定したので、医師の指示で一般病棟に移ることになりました。

ところが、今一般病棟が埋まっていて、一泊1万5千円の個室しか入っていただく所がないのですが、

それでよろしいでしょうか。」

一泊1万5千円の出費は我が家には痛すぎるので、まずは断ってみた。

「大変お世話になっております。あのう、個室にしか入れないというのは、病院の都合ですよね。

私は4人部屋を希望しています。差額ベッドの費用についてもう一度ご検討いただけないでしょうか。」

結局、病院側の都合で入ったので個室でも差額ベット代を払わなくても良いことになった。

このようなことがあったら、とりあえず差額ベッド代を払うことに同意するのかどうか、

自分の意思を伝えてから病院側の対応を見た方が良いと思います。

以上ご参考までに。)



テーマ : 病気と付き合いながらの生活
ジャンル : 心と身体

真夏のICU入院

夫は金曜日から肺化膿症の治療のためにT病院に入院した。

T病院には4月に同じ病名で17日間入院したが、今回は何と入院した先がICU!…

ということから前回より重い症状で入院したことがわかろう。


前回の記事で述べたように、月曜の診察で処方された抗生物質を施設で3日間服用したが、熱が一向に下がらず、

金曜日に撮ったCTと血液検査によって病状が月曜日よりさらに悪化していることが判明した。

今回のCT画像では、4月からある右肺の古い病巣以外に、左肺全体をすりガラス状に覆う陰影が発生していた。

肺機能の低下によって酸素値が90を切るようになり、炎症を示すCRP値がさらに上昇した。

更に気がかりなのは、今回は腫瘍マーカー(CEA)も高い数値を示した点である。

以上のことから、連休中に病状が急激に悪化する恐れがあるという理由でICUでの集中治療となった。


夫のICUデビューは、「夫はまだまだ絶好調」と思っていたかった私に、

彼の病がついに次のステージに突入したという辛い現実をつきつけた。

ICU室のベットに横たわり、身体全体に様々なチューブをつけられて点滴や酸素を注入され、

脈拍、呼吸、酸素値を常時モニタリングされている夫を見ていると、

「本当にこんなに悪いの?」

と現状を受け入れることができない自分がいる。

だってお昼は私と一緒に病院内のドトールでミラノサンドを美味しそうに食べていたし、

試しにアイスコーヒーのストローを口にくわえさせたら自分で吸って「美味しい」と言ったし、

病院の待合室で急に自分で立ち上がってふらふら歩くことも出来た。

それが5時間後に身体を拘束されて点滴で水分補給されるなんてちょっと信じられない。

早く出してあげたいなあ。


と不安な気持ちを述べてみたが。

実はそんなに絶望的な気分に陥っている訳でもない。

夫が新しいステージにおいても理想的なサポート体制に恵まれそうな予感がするからだ。


今回の入院中の主治医となる呼吸器内科のS先生は、大変話しやすいお人柄の女医さんである。

入院に当たって、夫の現在の病状と今後の医療方針を私たち家族に説明して下さったあと、

今後の治療に当たって私たち家族にまず決めて欲しいことを次のようにのべられた。


➀ 4月から存在する右肺の陰影の正体が癌であるかどうか、現時点では確定できない。

 問題は癌であるかを確定するための気管支鏡を用いた検査等が煩雑で、患者に苦痛を与えることである。

 それが果たして痰をとるだけでも5人がかりだった夫に耐えられるのか。

 癌であるとわかったとしても、その肺癌の手術が本人にとって望ましいことかも考えなくてはいけない。

 手術はできる。しかし、術後に「生きたい」という強い意志をもってリハビリをすることができる患者でないと、

 「長期間の苦痛を伴う寝たきり状態」にするための手術をした、ということになりかねない。

② 最新の医療技術を駆使した治療を行うことで、患者の生存率を高めることはできる。

 しかし、どんな優れた治療方法であっても、それが患者の本来の気持ちに背く治療であれば、

 それは単なる医師のエゴでやった行為に過ぎないように思う。 

 夫がどういう治療を望むような人であったのかを知りたい。

 以前そのような話をしていなかったのであれば、家族がどのような治療を希望するのかを教えて欲しい。

③ 肺の炎症の原因が特定できないまま、熱が下がらず状態が悪化している。

 まずはICUでの集中治療で、状態の安定を図っているが、この先呼吸不全に陥る可能性もありうる。

 その時人工呼吸器をつける希望があるかどうかをうかがいたい。

 心臓が停止したときに心臓マッサージをしてもよいのかも確認したい。
 
 
 「ご主人にとって望ましい治療方針を一晩家族で相談して、翌日に返事をしてください」と、

 S先生は翌日の午前に再度面談を行うことを提案して下さった。


 S医師との面談には次女も勤務先から新幹線で駆けつけて参加した。

 S先生は次女が医師であることを知って、画像の分析や治療の経緯を医療用語を交えて詳しく説明して下さった。

 家族と医師の双方の立場を理解できる次女の存在は、S医師にとっても私にとっても大変有難く、

 そして夫のDNAをしっかり引き継いでいる彼女は、夫の「気持ち」の最大の理解者でもあるように感じた。

 
 医師との面談後、私と娘は施設に赴き、夫の病状やS医師の考えを報告し、

 翌日の医師との面談に施設の方も出来れば参加して欲しいとお願いした。

 帰宅後、電話で面談に参加できなかった長女と話をして、家族の意思統一をした。



 翌日の面談は、今後の夫の治療と介護に関わる、T病院のスタッフ3名と施設代表のIさん、私と次女で行われた。


 S医師がICUに入ってからの夫の様子を報告した後、私と娘が以下の家族の方針を伝えた。


 1、発病する前の本人は、確固たる生活信条や価値観をもって生きていたと思う。
  
  彼は一人静かにお酒を飲みながら本を読むのが好きな人であった。

 (それを聞いたS医師は「ご主人は素敵な人だったんですね」と夫をほめて下さった。)

  その喜びを味わうことが出来なくなってしまった今、私たちが望むことは、

  とにかく穏やかな余生を送らせてあげたい、ということに尽きる。

  本人は今まで施設の皆さんの手厚い介護のお陰で、穏やかな生活を送っていた。

  病院での治療や手術に延命の効果があっても、 その結果病院での苦痛をともなう長期の寝たきり生活

  になってしまったら、それは彼が本来望んでいた余生の姿ではないように思う。

  一日でも長く彼の無邪気な笑顔を見ていたいというだけの理由で延命を望むのは,、

  彼の尊厳を無視した家族のエゴだと思う。

  重度の認知症である彼を長期間の寝たきり状態にはさせたくはない。

  
  と願う一方で、彼はまだ61歳で食欲があり、生きる力が大いにあるようにも感じる。

  もしも長く施設で穏やかな生活が送れるための治療や手術があればぜひお願いしたい。

2、人工呼吸器や心臓マッサージはしないでほしい。

  次段階の治療がないのに人工呼吸器で呼吸だけ続けさせて生き続けても、

  それは本人にとっては何の意味がないのではないかと思う。



  S医師は私たち家族の意思を十分理解して下さり、これから私たちと密に連絡をとりながら、

  家族の意向に沿った治療方法を考えていくと約束してくれた。

  施設のIさんも、施設側でできる緩和治療体制について説明して下さった。

 

 もちろん今すぐに延命治療か緩和治療かの選択を迫られるという時期には至っていない。
 
 でもその覚悟をもたせる良いタイミングを下さったS先生に感謝すると同時に、

 新しいステージにおいても理想的なサポート体制が期待できそう、という安心感を抱いている。。


 今日もこれからICUに夫に会いに行きます。
 
 突然各種モニター機器の機械音がだけが響き渡る見知らぬ空間に閉じ込められて

 きっと不安な気持ちでいっぱいだと思う。、

 でも実は決して孤独ではなく、家族以外の沢山の人が彼を応援していて

 どうやったら本人にとって一番良い方向に進むことができるのかを

 みんなで一生懸命考えている最中であることを、笑顔で伝えてあげたいなあ。

  
 (長文を読んでいただきありがとうございました。

  暑い日が続きますが、皆様どうぞ楽しいお盆休みをお過ごしください)

テーマ : 病気と付き合いながらの生活
ジャンル : 心と身体

肺炎の再発

好夢不長ーーー 良いことが長続きしないのは世の常である。

夫の5~7月にかけての「絶好調」状態も、梅雨の合間の晴れ間と同じように長続きしなかった。

4月に肺化膿症の疑いでT病院に18日入院した。

入院中に抗生物質を点滴投与したところ熱が下がり、30近くあった炎症を示すCRP値が正常に戻った。

ただし、右肺にたまった大量の水と膿を完全には除去できなかったので、退院後は施設で錠剤の抗生物質を服用して

7月に再度CTをとって肺の回復状態をみることになった。

退院後の夫の体調はブログで紹介したように絶好調で、外の散歩を楽しむ状態にまで復活した。

7月31日に7月17日に撮ったCTの画像の結果を聞きに行った。

きっと今回の診察では

医師:「お元気そうですね!肺もすっかり綺麗になっていますよ。」

私:  「そうですか。お陰様で退院後はとても元気になりました。先生色々お世話になりました。」

というなごやかな会話が交わされるだろうと予想していた私が甘かった。

絶好調と思っていた7月17日に撮った夫の肺のCTの画像をみた総合内科のK医師は、なんと

「良くなっていませんね。右肺の膿らしき影の部分が消えているどころか4月より大きくなっています。」

と心臓をえぐるような悲しいことをのべられた。

右肺の膿らしき影がどうして消えないのか、原因は内視鏡や組織検査をしないと明らかにならないという。

癌の可能性も否定できない。

さらに28日から出はじめた夫の熱が診察日の31日になっても下がっていなかったので

抗生物質を一週間服用してから再び診察を受けることになった。。


8月5日に総合内科に再診に行った。

困ったことに31日に処方された抗生物質を服用しても熱が下がらない。

再びCTをとって31日のCTと比較すると、今回は左の肺も炎症を起こしていることがわかった。

血液検査の結果,CRP値も7月31日の時よりかなり高くなっていることが判明。

またどこかで炎症が起きているのだ。

「他の抗生物質を試してみましょう。まずはとにかく熱を下げないと。痰も取って分析しますね。

今の状態では前から悪い右肺の病巣の精査もできません。」

抗生物質を替えて熱が下がるか様子を見て、8月9日に呼吸器内科の専門医に診てもらうことにした。


残念ながら夫の肺は完治どころか、両肺に問題を抱えてしまっていた。

認知症が進行すると体の諸機能が衰えて、しだいに体のあちこちが悲鳴をあげ始める。

夫の場合、高校時代から(笑)タバコを吸っていた肺が弱くなっていたのかもしれない。

悪い空気を散々吸ってきた夫の肺にはもともと汚れがたまっていたのだろう。

そこに誤嚥してまぎれこんだばい菌が繁殖して肺の入り口にばい菌の塊りが発生したのかな。

無気肺の部分もありそうといっていたけど、肺組織が空気を吸いこめない状態になっているのかな。

と、我が家の台所の使い古しの汚いスポンジをいじりながら現在の夫の肺を妄想してみた。

スポンジならさっと新品ととりかえられるのにねえ。

ところで

病院の診察はいつも施設の看護師さんが付き添って下さる。

夫の診察の順番を待っている時、私と同い年の看護師のAさんが突然ご自分のご主人のことを話された。

Aさんのご主人は58歳で肝臓がんで亡くなったそうだ。

病気が判明したときはすでに手術ができない状態だったらしい。

病気を告知された3か月後にすっと亡くなってしまった。

医者は、末期癌であることを直接本人に伝えた。

突然余命を告知されたご主人は大変に辛い思いをされたそうだ。

いつもお世話になっているAさんが私と同様ご主人の病気で苦労をされたことを始めて知った私は、

「それは本当に辛かったでしょうねえ。ご主人もAさんも。」

というのが精いっぱいであった。

それに比べたら、病識がないので肺がんだったらどうしようとおびえることもなく、還暦も無事超えることが出来て

やさしい方々に囲まれて余生を飄々と生きていられる夫は、まだ幸せな方なのかもしれない。

と私が思えるように、Aさんはご主人のことをお話しされたのだと思う。


翌日も夫の様子を見に施設に行った。

微熱はあるが、いつも通りに施設の夕ご飯を完食した

こんどの抗生物質の方が効果があるのか。熱は少し下がったそうだ。

「何かあったら電話しますから、あまり心配しなくて大丈夫ですよ。」と施設のスタッフさんがおっしゃって下さった。

早く熱が下がると良いなあ。 

それにしても、夫が弱くなればなるほどますます愛しく感じてしまうのはどうしてなのだろう。

テーマ : 病気と付き合いながらの生活
ジャンル : 心と身体

新たな家族

今年の土用の丑の日の話です。

ホームでは毎年必ず丑の日のお昼に鰻が出る。

「今年も大好物の鰻を食べたのかな?」

と思いながら夕方に会いに行くと、夫の部屋から

「ゴホン・ゴホン」と咳の音がした。

部屋に入ると、ソファに座っている夫は私の顔を見て何かを話そうとしたが、

「ゴホン・ゴホン」と咳がでてしまって話すことが出来ない。夏風邪をひいたのかしら?

また肺炎になって長期入院になったら大変と思って、すぐにスタッフルームに行って

「咳をしていますが大丈夫でしょうか」

とスタッフさんのTさんに言ったら、

すぐにケアマネさんと看護師さんを連れて部屋に来てくれた。

三人が私に今日の夫の様子を次のように報告してくれた。

「3時に鼻水がでているので熱を測ったら37度2分ありました。」

「夜に布団をどうしてもはいじゃうんですよ。寝冷えしたのかな。」

「よく鼻水が出ます。もともとアレルギー性鼻炎気味だったということはありませんか。」

「食欲はあるんですけれどね。今日も鰻をご自分で召し上がっていました。」

あっ鰻はちゃんと食べたんだ。良かったね~。

寝冷え、鼻水、微熱、食欲はあってごきげん・・・・

体調を示すキーワードはよく風邪をひく孫の義人君と大体一致している。

でも夫の場合は、肺化膿症が再発している可能性があるので決して油断できない。

「もう一度お熱を測りましょうね。」

と言って、看護士のNさんが夫をやさしくあやしながら体温計をわきの下に入れる。

「37度4分、大丈夫かな。」

といいながらご主人の手をやさしく撫でると夫は

「それは、きっと〇〇××ですよ。」

とNさんの顔をみて意味不明の言葉を発した。。

「ご主人はこうしていつも私にいろいろ話して下さるんですよ。

年齢が近いから、親しみを感じてくれて色々話すことがあるのかな。」

「うんうん、長くお世話になっているから、夫もNさんのことを家族の一員と思っているのかもしれませんね。」

夫がW病院に入院していた時に、夫を施設で介護できるかを判断するために夫に会いに来て下さったのがNさんであった。

Nさんと話していたら、Yさんがスポーツドリンクを持ってきて下さった。

「急に暑くなったから、ちょっと熱がこもったのかな。水分とらなくちゃね。」

山口百恵の歌を聴きながらスポーツドリンクを飲んでいたら夕食の時間になったので、

夫と仲良く手をつないで食堂へ行った。

食堂に行くと、夫をわが息子だと信じている入居者のAさんが私たちに寄ってきて、

夫に

「○○ちゃん、どこにいたの?ほら明日○○に行くから・・」

と、やさしく話しかけた後、夫にべっとり寄り添っている私をきっとにらみつけてこうおっしゃった。

「ちょっとあなたは関係ない人だから、あちらに行って下さらない」

「だから、あなたはここにいなくてよいの。あっち」

えっ嫁のわたしはじゃま? 

堂々の嫁いじめに、私もスタッフさんも大笑い。やっぱり愛しいのは我が息子だけなのね。

肉団子入りの煮物と、オクラのねばねばサラダ、ほうれん草のピーナツ和えの夕食を完食した後、

若いスタッフのFさんが食後の薬を飲ませようとしたが、夫は中々口を開けようとしない。

するとFさんは夫に思いっきり変顔をして、夫を笑わせようとした。

すると夫も負けずに変顔をして、Fさんを笑わせようとする。

いきなり変顔勝負をはじめた二人があまりにも可愛くて

「アハハ」と私が笑うと、

夫もにこりと笑って、それから大きな口を開けてくれた。

「ご主人はいつも私の顔をみると、色々な変顔してくれるんですよ。

顔がひょうきんな私のことをからかっているのかな。」

「彼は若くてかわいいFさんから笑いをとりたくて必死なんですよ。
 
これからもそうやって笑わせてあげてくださいね。」

妻役のNさん、お母さん役の入居者さん、娘役のFさん、

どうやら夫はここで新しい「家族」を育んでいるらしい。

ということは、私は週末だけ顔を見に来る「愛人」に過ぎないのかな(笑)

そしてホームの中には、さらに沢山の年上の「愛人」がいらっしゃるような気がする。

彼に関心をよせる家族は多ければ多いほど頼もしい。

ホームの家族の皆さま、どうぞ彼のことをよろしくお願いいたします。

夫の熱が早く下がりますように。

PS:結局土用の丑の日に出た夫の熱が8月になっても下がらないので明日病院に行くことになりました。

悪い病気でないと良いのだけれど・・・

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プロフィール

ルッコラ

Author:ルッコラ
ルッコラとバジルと走ることが大好きです。
家族は夫と娘二人と黒いフレンチブルドッグのラッキー君。
2009年に若年性アルツハイマーと診断された夫は、在宅介護と認知症専門病院の入院を経て、現在は有料老人ホームにいます。要介護4。食事は全介助。でも仲良く手をつないで散歩をすることができます。介護は初心者なので、どうぞ感想やアドバイスをお願いいたします。

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